家族信託とは、信頼できる家族や親族に、自分の財産(不動産・自社株・金銭など)を託して、管理・運用・処分を託せる制度です。家族信託は「民事信託」とも呼ばれ、信託銀行や信託会社の商事信託とは別物です。
遺言者がお亡くなりになってから効力が発生する遺言と異なり、委託者や受益者がお元気なときから、資産管理全般を後継者に託すことができます。
家族信託契約はいつでも始めることができ、設計の自由度も高いことから、積極的に活用されております。
判断能力が低下する前に...
受託者が財産を売却(処分)などして、お金を治療費や施設代金に使うことができます。
【比較】
1. 何も対応をしなかった場合
判断能力が低下したら資産の移動に支障が生じたり、家族が自宅などの売却や賃貸などしたりすることができない可能性があります。
2. 成年後見制度の場合
財産を処分するには、合理的な理由が必要で、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
将来相続が発生してしまうと...
契約書の中で、受託者が亡くなった場合に残余財産や信託受益権を取得する人を指定できます。( 遺言と同様の機能)
【比較】
1. 何も対応をしなかった場合
相続財産は相続人間の遺産分割協議で分配されます。交渉がまとまらないと、相続人が共同して財産権を所有する「準共有」の状態が継続することとなります。
2. 成年後見制度の場合
後見人に司法書士や弁護士など第三者が選任される可能性があります。( 約80.3% )
※参照:厚生労働省「成年後見制度の現状」( 令和3 年3 月)
アパートオーナーである父親が高齢になり、判断能力が低下すると、アパートの管理全般に支障が生じて心配だが、何か良い方法は...
高齢になって判断能力が低下すると信託契約を締結することが難しくなり、賃貸借契約や建替え、売却などができなくなるおそれがあります。元気なうちに信頼できる家族などに財産管理を託すことができます。
父親は娘である私に対して、所有しているアパートを承継させるとは言っていたものの、遺言書はないようで、どうしたらいいのか...
信託契約の作成をおすすめします。その契約書に記載された帰属権利者は信託されていた財産を承継することができます。または、指定された次の受益者が信託受益権を承継することもできます。
信頼できる家族や友人などに財産管理を託すことはできるのか...
信託契約の場合、ご家族など信頼できる方に財産管理を託すことができます。ただし信託法などの規定により、たとえ無報酬であっても、弁護士や税理士、司法書士などの「士業」や、営利を目的とする事業法人などは、職業として受託者とすることはできないと考えられます。
不動産オーナーの場合
財産管理機能 | 父親(オーナー)が委託者兼受益者、子どもを受託者とする不動産の信託契約を締結することによって、元気なうちから不動産の管理を子どもに託したり、その管理や処分の方法について指図を行ったりすることができます。 |
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財産承継機能 | 信託契約の定めにより、委託者である父親がお亡くなりになると、帰属権利者である母親は不動産を承継することができます。また、指定された次の受益者が信託受益権を取得することもできます。 |
安心確保機能 | 子どもや信頼できる友人などを受託者とする信託契約を締結することで、財産管理を託すことができます。 |
中小企業オーナーの場合
財産管理機能 | 受託者である後継者は指図権者である社長(オーナー)の指図に従って議決権を行使し、自社株の管理全般をおこなうことができます。なお、契約当初に受託者に議決権行使を含めてすべて託すこともできます。 |
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財産承継機能 | 信託契約の定めにより、委託者である社長がお亡くなりになると、帰属権利者である後継者は社長の自社株を取得することができます。 |
安心確保機能 | 社長が元気なうちに、後継者との間で信託契約を締結することにより、社長の自社株の管理全般を託すことができます。 |
後見制度と異なり、身上監護( 家事、介護など) を目的としたものではありません。
信託財産も遺留分侵害額請求の対象となる財産に含まれるため、全体の財産承継に留意した信託契約の作成をご案内することも可能です。
※【遺留分】兄弟姉妹以外の相続人のために法律で保障された最低限の相続分。
※【遺留分侵害請求】遺留分を侵害された相続人が、遺産の取戻しを求めること。
資産の名義が委託者から受託者に移転するため、信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかります。
金銭を信託する場合は、受託者は委託者から預かった金銭を自分の財産と分別管理する必要があります。お財布が2つあるイメージです。既存の普通預金口座ではなく、新たに信託口口座を開設することをおすすめします。
⇒信託口口座を開設できる銀行は限られています。金融機関をご紹介することは可能です。
委託者と受益者が異なる場合( 他益信託)、契約時において信託受益権が他者に移動することになるため、贈与税や譲渡所得税の対象となることがあります。
⇒委託者と受益者を同一にしておけば( 自益信託)、利益の移転がおこらないため、課税されません。
信託契約を行うには、信託設定時( 開始時) に提出するもの、信託の期間中に毎年提出するもの、信託内容に変更があった時に提出するもの、信託が終了する時に提出するものがあります。
※書類の種類・書き方など、詳細については税理士にお問い合わせください。
信託財産にかかわる不動産所得から生じた損失の金額は、信託していない他の不動産所得や他の所得と損益通算することはできません。ただし、信託不動産から生じた所得は、他の所得にかかる損失と損益通算することができます。
受託者を子どもにする場合、それ以外の子どもの同意は必要?
必要ありません。
信託契約は、委託者と受託者が契約の当事者となって成立するため、他の家族の同意は不要です。
一度作成した信託契約の内容を変更できる?
できます。
委託者・受託者・受益者などの合意があれば、契約の途中でも契約内容の変更が可能です。
信託契約を締結すると、成年後見人や遺言書は必要ない?
用途によって使い分け、場合によっては組み合わせて使いましょう。
上述のように、信託と成年後見・遺言書では、対応可能な範囲や目的などが異なります。司法書士などの専門家と相談しながら、ご自身にあった制度を活用しましょう
認知症になってからでも信託は契約できるの?
後見や保佐レベルまで判断能力が低下したら、一般的に信託契約を締結することはできません。
農業を営んでおり畑をもっているが、畑も信託することはできるの?
田畑を信託する場合には、農業委員会の許可が必要です。
田畑などの農地は「農地法」によって規制されており、信託を設定するには農業委員会の許可を得る必要があります。また農地を信託するには、受託者が農業従事者であるか、農地のオーナー自身が農地以外の用途に変更する「農地転用」の許可を得る必要があります。
信託契約と遺言で異なる内容があった場合、どちらが優先されるの?
信託契約が優先されます。
委託者が遺言書を作成したあとに、内容の異なる信託契約を締結すると、その異なる部分は遺言を「撤回した」とみなされ、信託契約が優先されます。また信託契約を締結したあとに遺言書を作成した場合は、信託契約により財産の名義は受託者に移るため、委託者の信託財産として遺言に記載することはできません。
信託できない財産ってあるの?
基本的に財産的な価値のあるものであれば、信託できる財産に制限はありません。
ただし、預貯金や一身専属的な権利、借入金などのマイナスの財産は信託財産にすることはできません。預貯金は別の金銭債権に変更することで信託財産とすることができます。
借入金の担保となっている不動産は信託できるの?
事前に金融機関などの了承を得る必要があります。
信託契約は受託者に名義が変更になるため、委託者が金融機関から借り入れがあれば、事前に銀行との調整が必要です。
信託の契約は当事者だけでできるの?
当事者のみで契約できますが、司法書士などのアドバイスを踏まえて公正証書で作成することをおすすめします。
信託契約は比較的馴染みの薄い信託法を根拠としているため、当社や司法書士などに相談することが望ましいです。
信託を利用するには、どのような費用がかかるの?
ケースにより様々です。
信託の利用にあたって生じる代表的な費用には次のようなものがあります。
・公正証書作成費用
・専門家へのコンサルティング費用
・信託財産を登記する際の登録免許税や司法書士への登記手続き報酬 など